AIに指示すれば動くものができる。この数年で、その範囲は本当に広がりました。プログラムを書いたことのない人が、自分の手元の作業を自動化して回している例を、実際に見る機会が増えています。
先に立場を書いておくと、当社は業務システムの受託開発を仕事にしています。ですから「内製はやめたほうがいい」と書けば、それは自社の商売を守る主張に見えます。その前提で読んでいただいたうえで、それでも線を引いておいたほうがいいと考えている場所について書きます。
個人の業務なら、合わなければ直せばいい
議事録の整理、Excelの集計、定型メールの下書き、毎週決まった手順の作業。この範囲であれば、AIを使って自分で作ることに反対する理由はありません。
理由は単純で、うまくいかなかったときに困るのが自分だけだからです。出力がおかしければ気づけます。使いにくければ直せます。途中でやめても、元のやり方に戻るだけです。作ったものが自分の作業を写したものである以上、正しいかどうかも自分で判断できます。
この範囲で「専門家に任せるべきだ」と言うのは、単に選択肢を狭めているだけだと思います。
会社全体の仕組みになると、変わるのは難易度ではない
同じ人が同じやり方で、部署全体や全店舗で使うものを作ったとします。技術的な難しさは、実はそれほど変わりません。AIは大抵のものを作ってしまいます。
変わるのは、引き受ける範囲の方です。
止まったとき、業務が止まります。自分の作業が遅れるのではなく、他の人の仕事が進まなくなる。復旧の速さが、そのまま他部署への影響になります。夜間や休日に止まったときに誰が対応するのかも、決めておく話になります。
作った人がいなくなったとき、直せる人がいなくなります。異動や退職は普通に起きます。AIに書かせたコードであっても、なぜその作りにしたのかは作った人の頭の中にしかありません。引き継ぎ資料が残っていても、動いているものを安全に変更できるかは別の問題です。
要件が変わったとき、軌道修正できるとは限りません。個人の道具なら作り直せばいい。しかし業務が乗ってしまうと、動いている状態を保ったまま変える必要が出てきます。この難しさは、最初に作るときには見えません。
情報が外に出たとき、説明する責任が発生します。誰がどこまで見られるのかを設計するのは、機能を作ることとは別の作業です。取引先の情報や従業員の個人情報が含まれていれば、社外への説明も要ります。
数字が出てきたとき、それが正しいと誰かが保証しなければなりません。集計結果が業務判断に使われるなら、間違っていた場合の影響は判断そのものに及びます。動いていることと、正しいことは違います。
線は「作れるか」ではなく「引き受けられるか」で引く
作れるかどうかで判断しようとすると、線が引けません。AIは大抵作れてしまうからです。作れたことが、任せてよい根拠にはなりません。
引き受けられるかどうかで判断すると、線は引けます。止まったときに困るのが自分だけなら、自分で引き受けられます。他の人の業務が止まるなら、その責任は個人が背負える大きさを超えています。これは作った人の能力の問題ではなく、一人が引き受けられる範囲の問題です。
社内で内製の話が出たとき、確かめる価値があるのはここだと思います。技術的にできるかを議論しても答えが出ません。止まったとき誰が復旧するのか、作った人が異動したら誰が引き継ぐのか、間違った数字が出たとき誰が気づくのか。この3つに答えられるなら、内製で問題ありません。答えられないなら、作れるかどうかとは別の判断が必要になります。
作らない、という選択肢の置き場所
会社全体で使う仕組みについては、既にあるものを使うか、外部に任せるかを含めて比べたほうが判断しやすくなります。作る手間だけでなく、動かし続ける手間と、止まったときに引き受ける相手まで含めて比べるためです。
業務連絡や店舗からの報告のような、部署をまたいで毎日使うものであれば、業務連絡アプリの選び方——LINE® から乗り換えるとき、何を基準にするかで判断の観点を整理しています。
内製そのものを否定したいわけではありません。個人の業務で使う範囲は、むしろどんどん広げていいと思います。線を引いておいたほうがいいのは、その外側です。
自社のどの業務がその線の内側にあり、どれが外側かは、実際の運用を見ながら整理するのが早いです。30分のデモでは、部署をまたいで使う仕組みに何が必要になるかを、画面を見ながらご確認いただけます。
※ 「LINE」は LINEヤフー株式会社の登録商標です。本記事は事実ベースで業務システムの内製と外部調達の判断軸を整理することを目的としており、特定の手段の優劣を主張するものではありません。
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